『サイクリング県・やまがた』の序章の旅【後編】
『サイクリング県・やまがた』の序章の旅【前編】はこちら
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2日目スタートはJR古口駅(山形県最上郡戸沢村)
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2日目のルートは、最上川を少し離れて山越えをチャレンジする予定だったが、舗装補修工事のため通行止めになっているとのことで今回は断念。
そういう事情で、今回はJR古口駅へショートカットして2日目を走ることにした。
2日目のポイントのひとつは、最上川沿いを走って内陸から日本海側へ抜けるということ。
米沢からスタートしたこの旅は基幹ルートを走るのが目的。そのテーマはやはり最上川だ。水運の歴史は内陸と日本海をつなぐ。
Column
2日目のルートはこちら
URL https://ridefield.net/#/course/oOlJ8gxD5IWzEblcGqR1
山形県の規制情報
昨今日本中で災害が多く、山道のルートは事前チェックが必要だ。行き当たりばったりの旅も楽しいが、迂回ルートの取りづらい山奥では地元情報はありがたい。
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サイクリングで川沿いをたどるメリットは、比較的アップダウンが緩やかだということ。そして河口に向かって走るということは、当然下り基調になるのが道理だ。
つまり快適に、思った以上に距離を走破できてしまうルートなのだ。
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古口駅は最上川に近い無人駅だ。川沿いには国道47号線が走っている。
国道47号線は、宮城県仙台市から山形県酒田市までをつなぐ国道である。太平洋側から日本海側へと至る道であり、山形県内でいえば内陸部から沿岸部へと辿れる道路だ。
川は、酒田の海運へつながる、というとなんだか歴史ロマンがある。
地形的に交通の要衝であることは今も昔も変わりない。歴史的には最上川の水運が利用され、現代ですら人間が人力で通行できる内陸部から日本海側へのルートは、この国道47号線のほか数少ないというのだから、山形の自然の大きさを感じずにはいられない。
最上峡とも呼ばれるこのルートは、路肩が狭く、トラックの交通量も多いとの事前情報もあり、一抹の不安があった。
実際走ってみると、確かにトラックは多かったが、自転車に対して大きく距離をとって追い抜いてくれるドライバーがほとんどだった。むしろ、これだけ大きくよけてもらえると、恐怖を感じるよりも、心の温かみを感じてしまった。
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ドライバーたちへの奇妙な親近感を得て、最上川沿いを快走する。アップダウンにかすかな下り基調はスピードに乗せやすい。それから内陸からの追い風もある。
思いのほか少ない所要時間で、休憩場所である白糸の滝ドライブインに到着した。名前からして、滝が近くにあるのだろう、というくらいにしか思っていなかったが、ずばり対岸に見えるではないか。かなりの高さから、まさに白く岩肌を流れ落ちている。
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船で川下りも楽しめるとのこと。地域ルートで遊ぶ項目がまた増えた。そういえば、松尾芭蕉もこの道筋をたどったという足跡を、この先の清川関所で知ることができた。川下りはかなりのアトラクションだったに違いない。
この日は早い時間だったので、軽くお茶をしただけだが、昼時に立ち寄ればしっかり食事も楽しめそうだ。
庄内町で複数スポットに立ち寄り
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寄り道をしながら最上峡を抜けると、お昼に程よい時間だ。
どんと風車の一群がそびえたつ、その名も「道の駅しょうない 風車市場」に立ち寄ることにした。
Column
清川関所
荘内藩清川関所の一部を再現した公園。お食事処もある。松尾芭蕉だけでなく地域にゆかりのある清河八郎の功績が伝えられている。レンタサイクルもあり。
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東京や横浜では、ガンダムがあるが、なるほど、人はダムとか巨大な建造物が好きなのかもしれない。たかが風車と思うなかれ。
見上げると、えも言えぬ迫力を感じる。庄内の風車は伊達じゃない。ガンダムも及ばぬサイズ感。風車の足元にまで近寄ることができるのでぜひ見てほしい。
Column
北楯大堰
江戸時代に行われた工事により完成した用水路。その後の延長工事なども踏まえ、約5,000haの新田が開発され、88の村が開村した。
国際かんがい排水委員会によって、歴史的価値のある農業用水利施設を登録する「かんがい施設遺産」に選出。
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旅の終わり 羽黒山へ
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最上川を堪能しつつ、ついに最上峡を抜け、道の駅しょうないをあとにするといよいよ庄内平野へ。
旅の終わりに選んだのは、出羽三山の一つである羽黒山。
信心というものが表に出ていなくても、庄内の人々の精神の根底には、出羽三山への誇りがあるのではないかと感じる。
だから山形の最初の旅のゴール地に、この羽黒山を選んでみた。庄内エリアにはまだまだたくさんの象徴的な場所があり、どこをゴールにしてもよかったが、一度は来ておきたかった。そして、地域ルートでエリアを掘り下げるときには、ゆっくり歩きたいものだ。
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今回は大鳥居をくぐり、一の坂までを散策して満足した。それだけでも、かなりの歩きごたえ。
帰路は、その日のうちに鶴岡駅から新潟駅の乗り継ぎにより、新幹線で東京駅へと帰り着いた。なんだかあっという間の山形サイクリングであった。思ったより山形は近いのかもしれない。
2日目は、走行距離41.15km、累積標高354m、所要時間(休憩含む)3時間37分だった。
まとめ
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山形県を縦走する基幹ルートは、最上川の雄大な流れに沿って、初心者も一日の距離を無理しなければ走破しやすいルート。
新幹線利用で東京駅から米沢駅、鶴岡駅から東京駅へのアクセスも想像以上に良い。
知らない道を走る楽しさを広げるのに、山形県という選択肢が大いに入ってくるのではないだろうか。