『サイクリング県・やまがた』の序章の旅【前編】
山形県はサイクルツーリズムを推進するため、サイクリングルートの整備をすすめています。
山形県の推奨するサイクリングルートは2つに大別されます。
同県の各エリアをすべて貫流する最上川沿いを走る『基幹ルート』。そして各エリアの代表的な観光地などをめぐって楽しむ『地域ルート』。
今回、まずは山形県を大きく捉えてみる意味を込めて、基幹ルートに注目してサイクリングに出かけてみました。
今回の旅の出発点「JR米沢駅」
基幹ルートの始まりは、内陸側からスタートする場合、米沢市、南陽市、長井市などからなる置賜地方が起点となる。
置賜地方は、山形県の内陸南部。そこから最上川に沿うように山形県を縦走するのが、この基幹ルートの骨子となる。
今回の旅は、新幹線の停車駅である米沢駅をスタート地点とした。
米沢市といえば、上杉氏ゆかりの地として上杉神社や上杉家御廟所が残る。少し詳しい方なら伊達政宗の生誕地として連想する方もいるだろう。大きな町を連想したが、いざ降り立つと、米沢駅は巨大な駅ではなく、輪行バッグを担いて歩く身としては駅構内を歩き回らずに済んで助かった。
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米沢駅
山形新幹線の停車駅。東京駅からは、つばさ号、やまびこ号と連結した状態で出発する。福島駅でやまびこ号は切り離されるので、山形方面には、つばさ号に乗車。駅の外には大きな荷物の入るコインロッカー。トイレもあり、出発の準備を整えるのに便利。
身支度を整え早速走り出す。米沢市街地の道路事情は、知名度に対して交通量が少なく、走り抜けるのにストレスがなかった。サイクリングの出発点として正解だった。
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米沢をスタート地点として計画した1日目のルートはこちら
https://ridefield.net/#/course/JdEEsiMlkWNn0r7vsKz6
山形県内陸部の大型幹線道路である国道13号線を避けて北上。米沢~寒河江を結ぶ。
市街地を抜けて思ったのは上杉神社も上杉家御廟所も、道路に近いところにあるということ。
すぐに場所が分かった。少し記念撮影などしながら足を進める。
なるほど、基幹ルートは山形県の各所を、まずは簡単に触れてみるという意味で良いのかもしれない。
そんな風に思いながら、上杉神社と上杉家御廟所に黙礼をし、米沢市街をあとにした。
川西ダリヤ園へ
米沢市街地を離れて10数キロ。標識に川西ダリヤ園という文字が。
しかし一体ダリヤとは?
とにかく百聞は一見に如かず。なにごともこれだ。
というわけで訪れた川西ダリヤ園。
その昔、元は食用としてヨーロッパに持ち込まれたそうだが、王侯貴族に好まれ、観賞用として品種改良が重ねられ、いまやたくさんの種類が生まれている。
なるほど食用か。どの部分を食すかはさておき、花のサイズは確かに夏ミカンのような大きさと球状をしている。
しかし、これが同じ種類の花なのかと驚くほどに品種が豊富。そして球形なのが、いっそう花の存在感を増している気がする。
川西ダリヤ園は日本最大級の規模とのこと。見ごろともなれば、もっと色づいた景色を見せてくれるはずだ。
このエリアを重点的に走るなら、お茶や軽食などでたっぷり時間を使うのもよさそうだ。
道の駅でランチ
暖機運転もすんで本格的に出発。スタートの置賜地方は、山形県内陸部の平野エリアの一つ。
基幹ルートを利用して、もう一つの平野エリア、村山地方を目指すというのが本日のルート。
人が住みよい地域と地域をつなぐ道には、峠であったり坂であったり、難所がある場合が多い。
今日のポイントとして、置賜から村山に抜ける道路がどんな道であるかに注目している。
最上川が基幹ルートの軸になっているのは、水運や地形を歴史からなぞった良い考えだと思う。
ゆるやかに流れる河川に沿った道なら、おおむね平らなルートになるはずなのだ。
置賜の平野部は快調に足が回った。米沢駅を出発して、一度は遠ざかった最上川と今日のルートが再び接近するころ、ちょうど昼時となった。
そこで道の駅『川のみなと長井』に立ち寄ることに。
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けん玉カレー
昼食は日本一にあやかるべく、けん玉カレーをチョイス。
山形県長井市は競技用けん玉の生産量日本一!
快適ゆえにルートミス
寄り道を挟みつつ、いよいよ平野から平野へとつなぐ道へと続く。
果たして難所が待ち受けるのか、それとも最上川の恩恵があるのか。
今回知らない土地を走るにあたって、ルート作成で気をつけたのは以下のようなことだ。
サイクリングの途中、何度も地図を見直したり、サイクルコンピュータのナビ機能に頼りっきりだったりというのも興がそがれるので、なるべくルートは簡単に覚えやすく、できれば県道や国道のナンバーを一つ二つ覚えておけばよいようなルートを設定した。例えば、米沢市街は一回右折をしただけで郊外へと抜けた。その後はおおむね国道287号線をしばらく追いかけるだけでよいルートとなっている。
ただ、平野と平野をつなぐ、前述の難所であるかもしれない部分は、国道を避けるつもりでいた。もし難所で交通量が多かったりすれば、サイクリングとしては面白くない。だから国道をいったん避けて県道へ逃げるという予定であったが、あまりの快適さに曲がるポイントに気づかず、国道を走り続けてしまった。
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田んぼアートを発見!
田んぼアートを見たことがない筆者は当然のように立ち寄った。今年のテーマは「えび~にゃ」(災害時応援協定を結んでいる神奈川県海老名市のゆるキャラ)。
田んぼアートは、広い面積のものを遠くから見渡すため、遠近による大きさの見え方を調整して作られるという。アートを抜きにしても、広大な田んぼの景色は綺麗だ。
結果として、国道287号線のこのパートは思いのほか走りやすかった。積雪の多い地方の幹線道路は除雪スペースの為に路肩が広い道路が多く、サイクリングしやすい環境なのだ。
多少の交通量はあるが、広い路肩のおかげで全くストレスにならない。
しばらく最上川をちらりちらりと左手に見下ろしながら北上を続ける。アップダウンはあるものの、川の流れに沿って走ると長く険しい登りはない。
頑張りどころを与えてくれる起伏は、むしろあったほうがいいのかもしれない。なぜなら、登った分だけ下り坂で足を緩められるのだ。平坦を休むことなく何時間もこぎ続けるというのは、それはそれでつらい。時に下り坂を挟みつつ、足を止めても進んでくれる自転車の良いところだ。
ソフトクリームを食べてひと休憩
ちょっと腰を落ち着けて休みたいかも、と休憩に立ち寄ったのが道の駅『あさひまち りんごの森』だ。
今回のルートは、道の駅が点在していて休憩場所に困らなくてよかった。
食後の運動でおなかもちょうどこなれたところだし、絶好のおやつタイムだ。
道の駅をひとめぐりして、ソフトクリームを選択。すりおろしリンゴ味という、期間限定のメニューがあるではないか。
一口食べてすぐ感じる酸味。香料で作った味ではなくて、本当にリンゴがすりおろされているようだ。食感も、ソフトクリームといいつつシャーベットのようなシャリシャリ感。
今回食べたものは酸味が前面に出ていたけど、使用したリンゴによって味が変わるのだろうか? だれか試してほしい。
さあ、重くなり始めた足だが、ゴールは近い。もうひと頑張り。
1日目のゴール!道の駅 寒河江と慈恩寺
谷あい、山あいを抜けて平野が開けてくると町がある。寒河江市だ。
置賜地方・米沢から、無理のないサイクリングで余裕をもって寒河江に到着。これで内陸部の半分を走破したことになる。
1日目はここでゴール。10時にJR米沢駅を出発し、走行距離86.25㎞ 累積標高464m、所要時間(休憩含む)5時間49分の道のりであった。
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道の駅 寒河江 チェリーランド
サイクリングの発着点・経由地にも使われおり、この日もサイクリングで立ち寄った個人やグループの姿が見られた。敷地内には地元素材を活かしたアイスの販売やトルコミュージックで出迎えてくれるトルコ館などもあり、ゆっくり楽しみたい。
ちょっとそこまで
「道の駅 寒河江 チェリーランド」にたどり着いたところで、慈恩寺が素敵だよというのを耳にして足を延ばしてみた。道の駅からほど近い。
慈恩寺テラスに駐輪して、寺への山を登ると、少し日が傾いた寒河江の景色が見渡せた。
『サイクリング県・やまがた』の序章の旅【後編】はこちら→https://yamagatakanko.com/yamagatacyclingguide-2021-2
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慈恩寺&慈恩寺テラス
本山慈恩寺は国や県が指定する重要文化財である仏像が多数。慈恩寺の魅力を紹介する慈恩寺テラスは2021年5月にオープンしたばかり。近隣をサイクリングする際にも気軽に立ち寄れそうだ。