やまがたフルーツPR隊「YFP150」vol.3(後編)居合道体験・そば
山形県は、年間を通じて様々なフルーツが楽しめる「フルーツ王国」。そんな県内各地の美味しいフルーツや周辺観光スポットを、山形県内の学生たちによる「やまがたフルーツPR隊『YFP150』」(わいえふぴー いちごーまる)が取材し、その魅力を前編・後編にわたってお届けします!
第3回は、東北文教大学の皆さん!後編では「居合道体験」と「そば」の魅力について伝えてもらいますよ★
居合道体験
やまがたフルーツPR隊「YFP150」の東北文教大学 人間科学部 人間関係学科3年の鈴木愛梨、鈴木翔太です。今回は村山市と尾花沢市で楽しめる観光スポットの魅力を紹介します。
まず、居合道発祥の地で体験する村山市居合道体験についてです。
〇居合道発祥の地 村山居合振武館
本物のサムライ体験ができる場所が、村山市にあることをご存知でしょうか。村山市は居合道発祥の地であり、剣士の聖地として国内に留まらず世界からも多くの観光客が訪れています。
居合道とは、およそ450年前に誕生した武道の一種です。居合道では、相手と戦うのではなく、礼儀作法から始まり、架空の敵を想像して型の所作をくり返し学びながら、己の精神を鍛えることができます。居合道にはいくつかの流派が存在していて、「夢想神伝流」という流派が日本では最も盛んとのことです。
今回は、そんな歴史ある地で実際に90分の居合道体験に参加させていただいたので、その魅力をいくつか紹介します。
1.日本一社林崎居合神社と林崎甚助重信
体験のお話しの前に居合道の始祖・林崎甚助重信と村山市が居合道発祥の地とされることについて簡単に触れておきます。
林崎甚助重信が祀られている日本一社林崎居合神社の起源は、大同2年(807年)に林崎地区の東にある石城嶽(いしきだけ)の大明神沢の岩窟に、熊野権現(現在の熊野神社奥の院)が祀られ、旧荒宿村に降神し熊野堂として石祠に祀られたことが始まりとされています。その後の永承年中から正安2年(1300年)の間に現在の場所に移動され「熊野明神」と呼ばれるようになりました。
時を経て、居合道の始祖とされる林崎甚助重信は、天文11年(1542年)に奥州楯岡(現在の村山市)に誕生しました。幼い頃に父親を暗殺されたことをきっかけに剣術を学び抜刀の秘伝を授かったそうです。その後、19歳で京都へ赴き見事仇討ちを果たし、それ以降は全国を旅しながら居合道を広く伝えていきました。
林崎甚助重信がこの地で剣術を学び各地に居合を広めたという偉業を知った当時の村人は、境内の一角に居合大明神を祀り、明治10年(1877年)には神社庁に登録されて「熊野居合両神社」が正式な名称になったそうです。江戸時代から現在に至るまで、林崎甚助重信は、振武館に隣接する日本一社林崎居合神社に祀られています。そのため、ここ村山市は居合道発祥の地として、全国各地から剣客が訪れています。
また、毎月第3土曜日の午前10時には、この居合神社の前で「悪運斬り」の儀式も行われています。悪い運・縁や厄を半紙にふき取って畳筒に巻き付け、それを一刀両断することでその全てを斬り捨てるという催しで、どなたでも無料で観覧が可能です。旅の節目に、心身を整える時間を過ごしてみるのも良いかもしれません。
【写真:居合神社】

2.居合道体験
居合道体験では、道着に着替えた後、師範が目の前で実際に居合演武を披露してくれます。一つ一つの動きに無駄がなく精練された剣術に心が震えました。師範の雰囲気も演武前と演武中ではがらりと変わり、居合の所作に集中しているのが一目で分かりました。一通り居合演武を見終えると、今度は実際に私たちが居合の作法や型を体験します。抜刀から始まり、敵を斬ったあとの想定で刀を振って血を払い、鞘に納める。この一連の流れは「初発刀」と呼ばれ、居合道の基本の型になっています。
これだけ聞くと割と簡単に思うかもしれませんが、実際にやってみるとかなり刀が重くて操作性に難ありという感じで、自分が刀に振り回されてしまいました。また刀身が長いので、柄を握ったまま納刀しようとしても上手くできませんでした。納刀のコツとしては、鯉口を左手で握って切っ先が入ったら鍔の方に鞘を送り、刀を持っている右手だけで納刀をしようとしないことだそうです。居合道では、一人で型の所作に集中するため、精神を安定させつつ、普段の生活では味わえない緊迫した空気を体験したり、礼儀や作法などの武道の精神を学んだりすることができました。
この道場では、居合道の基本を体験できる「サムライ体験」や、迫力のある実演が見られる「サムライショー」が用意されています。体験者の約3分の2は海外の方で、とくに欧米や台湾からの家族連れが多く訪れています。英語・中国語(繁体字・簡体字)に対応したチラシもあり、体験時には通訳も同伴するため安心して参加できます。体験は最大で7〜8名までの少人数制で行われており、大人数の場合はサムライショーが中心となりますが、どちらも居合道の世界観をしっかり感じられる内容です。実際に道着を着て刀を構える体験は、参加者にとって忘れられない思い出となるようです。
体験から居合道を本格的に学び始める人も少なくありません。見た目の美しさ以上に、「武道としての力強さ」「殺気を感じる動き」が評価されます。誰かと対戦して勝敗を競うのではなく、あくまで個人で型の所作を会得することを目的としているため安全面にも配慮されており、しっかり日本文化を学びたいという真摯な姿勢の外国人観光客に支持されています。
【写真:師範演武】

「居合道はやったことがないから不安…」、と思う方も多いはずです。ですが、今回教えてくださった齋藤先生と伊藤先生はとてもフレンドリーで接しやすい方たちでした。一通り体験が終わった後にお話をするとかなり気さくで、取材中にも冗談を言って場を和ませてくれました。しかしひとたび居合演武が始まると一変!鮮やかな剣技と所作で見ている私たちを圧倒させ、まるで目の前に本当に敵がいるかのような感覚になりました。教えてくださる時は私たちの動きを細かく見てくださり、教え方からも居合道の精神を感じ取ることができました。
【写真:居合体験全体】
山形といえば豊かな自然や温泉のイメージが強いですが、私たちの身近に本格的なサムライ体験ができる場所があることに驚きました。居合道には、日本の武道ならではの静かな動きの奥に芯の強さや緊張感があり、とても魅力的でした。
実際に体験してみると、慣れない刀を使いながら、同時に身体の姿勢や所作を意識することが非常に難しく、昔のサムライたちがどれほどの技術を持っていたのかを改めて感じました。道場に入った瞬間から背筋がスッと伸びるような感覚になり、自然と気持ちが引き締まります。普段の生活では味わえない、まさに「和」や「The日本」を感じられるひとときでした。最初は難しくて戸惑う場面も多かったのですが、それ以上に「楽しい!」という感情の方が大きく、体験の最後に行った師範を前にした演武発表では達成感もあり、いい汗をかけました。日本人の私でもこんなに気分が上がるのですから、本格的な体験が外国人観光客に人気なのも納得です。日常から離れ、武道を通じて日本文化の奥深さを全身で感じられた新鮮な時間でした。
観光の醍醐味として、目で見て楽しむことももちろん良いのですが、居合道で日本文化の奥深さを全身で感じるのもまた貴重な経験ではないでしょうか。
山形を訪れる機会があれば、ぜひ立ち寄ってみてください。素敵な思い出になると思います。
【写真:刀を振り下ろす二人と集合写真】


※今回取材した「日本一社林崎居合神社」に関する情報は、以下の「詳細を見る」をご参照ください
そば処 鶴子
〇尾花沢市 そば街道
次に紹介するのは、尾花沢市のそば街道にある「そば処・鶴子」さんです。
このお店はかやぶき屋根で古民家風の古き良き外観で、田舎のおじいちゃんおばあちゃんの家を思い出させるような建物となっており、そばだけでなく、このお店の風情を懐かしむために来るお客さんも多いとのことです。
【写真:店舗外観】

そして、一番の推しポイントは、材料のそばを一から作っているという点です!手打ちなのはもちろん、使用する「原種最上早生」は店主の秋保秀雄さん自ら肥料も使わずに育てているそうです。この原種最上早生で作られたそばは「尾花沢そば」と呼ばれ、この地域でしか食べられず、そば本来の風味が口に広がる一品となっています。
私たちも実際にそばをいただきました。秋保さんおすすめのそばの食べ方がこちら!
まず、そば本来の味を楽しむために水だけをつけていただきます。そうすることで、純粋なそば本来の味と香りを堪能できます。続いて、そばに塩を少量かけていただきます。「そばに塩?」と思いましたが、塩気がちょうど良く、そばの風味と混じってアクセントになっていました。そして最後に、大根のしぼり汁とつゆにつけていただきます。大根のしぼり汁だけではピリ辛で、そばの味を打ち消してしまいそうでしたが、つゆを入れて薄めることで辛さを軽減し、そばと相性の良いつけ汁になりました。
【写真:蕎麦とのぼり】

実際にいただいたそばは、香りの強さが印象的でした。水や塩、大根のしぼり汁をつけて食べることに最初は「おいしいのかな?」と半信半疑でした。しかし実際に店主おすすめの食べ方を一通り試してみると、どの食べ方もそばの味と香りの良さを最大限引き出してくれました。大根の辛味とそばの香りが相性抜群で、食べたことのない美味しさでした。香りの強い最上早生だからこそシンプルながらも美味しく食べられる食べ方で、そば本来の味を存分に楽しむことができました。
また、「そば処・鶴子」さんでは、冬の時期や平日にそば打ち体験も行っています。美味しいそばを食べるだけでなく、体験という形で旅の思い出にしてみてはいかがでしょうか。
※今回取材した「そば処・鶴子」に関する情報は、以下の「詳細を見る」をご参照ください