山形県で脈々と受け継がれてきた精神文化
古来より歴史ある文化が多く残る山形県。精神文化もそのひとつで、山岳信仰の聖地や居合道発祥の地が今も存在しています。凛とした雰囲気が漂う聖地を訪れて、山形ならではの貴重な体験をお楽しみください。
あの芭蕉も訪れた山形県の山岳信仰文化
出羽三山(月山・羽黒山・湯殿山)
第32代崇峻天皇の皇子・蜂子皇子が593年に開山したといわれる出羽三山。
江戸時代には「西の伊勢参り、東の奥参り」といわれ、全国に名を馳せる霊山となりました。その頃から、月山=死後の安楽と往生を祈る山(過去)、羽黒山=現世の幸せを祈る山(現在)、湯殿山=生まれかわりを祈る山(未来)として敬われてきました。出羽三山を巡ることは「生まれかわりの旅」といわれています。現在でも山伏修行が行われ、中には一般の方も事前申込のうえ参加できる修行もあります。
俳人・松尾芭蕉も『奥の細道』の旅の途中に出羽三山すべてを参拝し、句を残しています。芭蕉も訪れた山岳信仰の聖地・出羽三山を巡って、生まれ変わった新たな自分を発見してみませんか。
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丑歳御縁年
出羽三山のひとつ湯殿山が開山された丑歳は、三山の神様の力が最も高まるといわれ、丑歳に出羽三山を参拝すれば12年分の御利益が得られるとも伝えられています。12年に一度訪れる幸運の年に、出羽三山をお参りしませんか。
山寺(宝珠山 立石寺)
860年、慈覚大師によって建立された天台宗の御山、宝珠山 立石寺。山寺の名称で親しまれ、今でも参拝者が絶えず訪れる東北屈指の霊山です。
江戸時代までは12の支院があり、多くの僧が修行に励んでいたといわれています。現在も山内には4つの院が残り、その面影を見ることができます。
登山口から参道の終点までは、約1,000段の石段。途中には、松尾芭蕉が山寺で詠んだ有名な句『閑さや岩にしみ入る蝉の声』の石碑や銅像が建てられ、参道の終点にある奥の院(釈迦堂)には、慈覚大師が中国で持ち歩いていたと伝わる釈迦如来と多宝如来が安置されています。
五大明王を祀る五大堂は、山寺随一のビュースポット。ここからは僧たちが修行した断崖絶壁の岩場など、山寺を一望することができます。
山岳信仰の極み 即身仏
かつて、飢饉や病に苦しむ人々がたくさんいました。そのような人々の苦しみや悩みを代行して救うために修行に挑み、自らの体を捧げて仏となられた方を即身仏といいます。即身仏になるための修行を途中で投げ出すことは許されず、修行に耐え抜いた者のみが即身仏になることができました。
修行のひとつ「木食(もくじき)修行」が行われた場所が湯殿山の仙人沢でした。その修行は、山に育つ木の実や山草だけで過ごして肉体の脂肪分を落とすもので、途中で倒れてしまう人もいたほどの大変厳しい修行だといわれています。
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松尾芭蕉『奥の細道』ゆかりの地を巡ろう
『奥の細道』の行程中、松尾芭蕉が山形に滞在した期間は40日にも及びます。山寺や出羽三山はもちろん、最上川で詠んだ『五月雨を集めて早し最上川』をはじめ、多くの句を残しています。芭蕉の資料が残る「山寺芭蕉記念館」、「芭蕉清風歴史資料館」、芭蕉が滞在したとされる「封人の家」や松尾芭蕉像・句碑が県内に点在しています。松尾芭蕉ゆかりの地を巡って一句詠んでみるのもまた風情がありますね。
究極の『和』の追求 居合道
居合道発祥の地 日本一社居合神社
日本武士道の基本となった「居合道」。そんな居合道発祥の地が山形県にあります。
その歴史は古く戦国時代まで遡ります。1542年、現在の山形県村山市に誕生した居合の始祖・林崎甚助。父が闇討ちにより暗殺されてしまい、その仇討ちの為、13歳頃から熊野神社(現在の日本一社林崎居合神社)に祈願参拝し、修行に打ち込んだそうです。神様により居合(抜刀)の極意を伝授され、居合術の流派・林崎夢想を編み出しました。そのため、日本一社林崎居合神社が居合道発祥の地といわれています。
居合道体験
居合道の聖地・日本一社林崎居合神社すぐそばの道場で、居合道体験(サムライ体験)をすることができます。
有段者の先生方の居合演武を間近に体感でき、本物の居合道の迫力に圧倒されてしまうことでしょう。約450年もの歴史を持つ居合道の精神や作法などの型を学び、己を磨いてみませんか。
世界に誇る山形の精神文化「やまがた出羽百観音」
最上三十三観音 第1番 若松観音
「やまがた出羽百観音」とは、山形県内にある最上・庄内・置賜の3つの三十三観音の総称です。3つの三十三観音を合わせて百観音と呼ばれるものは全国に3つ(日本百観音、東海百観音、やまがた出羽百観音)ありますが、一つの県で完結するのが「やまがた出羽百観音」です。
百観音それぞれに、語り継がれてきたストーリーがあり、幸せを願うそれぞれの祈りを受けとめてきた重みと今を生きる私達の想いが交錯するときが旅の始まりです。行ってみようと思ったとき、誘われて一緒に行こうかなと思ったとき、簡単な旅支度で十分です。まずは出かけてみましょう。
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三十三観音:観音様は参拝者の願いに寄り添い、三十三の姿に変身し、人々を救うとされていることにちなんで、現世と来世の安楽を願い、三十三か所の霊場を巡礼することが古くから行われてきました。